ある日、富士山が静かに立ち上がり、空へと突き上げるように爆発的に噴火した。火山の激しい爆発音は、周囲の村々に轟き、黒煙が空に立ち上った。人々は恐怖に震え、避難を余儀なくされた。しかし、一人だけが冷静な表情で富士山に向かって歩みを進めた。それは、老婆おばあさんだった。
おばあさんは、村の伝説の中で最も知られた存在だった。彼女は長い間、この土地に住んでおり、その年齢は数百歳にも及んでいると言われていた。彼女は美しい緑色の着物に身を包み、一本杖を手に持っていた。
村の人々が恐れる中、おばあさんは富士山のふもとに到達した。噴火口からは溶岩が噴き出し、地面は灼熱の炎に覆われていた。しかし、おばあさんは冷静さを保ち、噴火口へと進んだ。
そのとき、火山の深淵から恐るべき音が聞こえた。それは巨大な咆哮だった。おばあさんの目の前に、噴火口から飛び出てきたのは、巨大なトラだった。トラは炎を纏っており、目は赤く燃えていた。それは火山の怒りそのものであるかのようだった。
おばあさんは一本杖を地面に突き刺し、静かに立ち上がった。そして、彼女は言った。
「富士山よ、お前の怒りは無駄だ。この土地に住む者たちはお前に感謝している。お前の存在がこの地を肥えさせ、美しく保っている。しかし、今はお前の怒りを静める時だ。」
トラはおばあさんに向かって咆哮し、炎を吹きつけた。しかし、おばあさんは微笑んで拳を突き出すと、その拳から緑色の光が放たれた。
その光はトラの体に触れると、トラの姿が変わり始めた。炎が鎮まり、目の赤さも消え去った。トラは次第に小さくなり、最終的には可愛らしい子猫の姿に変わった。
おばあさんは子猫を抱き上げ、優しく撫でた。そして、彼女は再び言った。
「富士山よ、お前は怒りや破壊の象徴であるべきではない。お前はこの大地の一部であり、私たちの守護者だ。今度から、お前の怒りを静め、美しい自然を守っていってほしい。」
その言葉とともに、富士山の噴火は収まり、静寂が戻った。おばあさんは子猫を抱いて帰り、人々は安心して村へと戻った。
以降、富士山は再び穏やかな姿を見せ、その美しい景色が讃えられるようになった。おばあさんの力と知恵によって、富士山の怒りは静められ、大地と人々は共に調和しました。
この伝説は、村の人々によって代々語り継がれ、おばあさんは「富士山の守護者」として尊敬されるようになりました。そして、彼女の偉業は富士山の美しい自然と共に、永遠に語り継がれ続けるのでした。
